非侵襲的臨床評価:診断と予後の判定
Clinical and Noninvasive Evaluation: Diagnosis and Prognosis

Hector O. Ventura
Ochsner Medical Institution
New Orleans, LA, USA


心不全の外見は無症状の患者から肺うっ血や心源性ショックを呈する患者まで多彩であるためにその診断は困難を伴う。心不全の診断が初診時から確立される患者は50%に過ぎない。Ventura博士は心不全の診断を改善するために系統的な方法を発表した。この方法は病歴、身体所見、および臨床検査より成り立つ。

病歴
・心不全の主要徴候:労作による呼吸困難、起坐呼吸、
 発作性夜間呼吸困難、倦怠感、衰弱
・患者の既往症
・家族歴
身体所見
・完全な身体所見の検査
・静脈圧
・肺の検査
・心臓の検査
臨床検査
・心電図
・胸部レントゲン
・心エコー図
・心肺負荷試験
血液性化学検査
・B型ナトリウム利尿ペプチド
・完全血球検査
・尿検査
・血中尿素窒素
・肝機能、腎機能検査
・甲状腺刺激ホルモン
・血糖値
・血清クレアチニン

完全な病歴を得るには患者に、心不全の主要徴候(労作時の呼吸困難、起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、倦怠感、衰弱)を訊ねる必要がある。心不全が進行するに従って、患者は腹痛や腹部膨満感などの消化器症状を訴えることがある。心不全の末期には不安症状、パニック発作、失神、精神活動の低下、あるいは錯乱などの精神神経症状を来す。既往歴としては、高血圧、冠動脈疾患、心筋梗塞、および心不全の家族歴などを確認せねばならない。

心不全診断の第2段階は完全な身体所見の診察である。特に注意を向けなければならないのは静脈圧、肺、および心臓である。静脈圧は肝頸静脈反射によってチェックする。無呼吸/呼吸低下や中枢性睡眠時呼吸停止などの呼吸障害は心不全患者でよく見かけられる。心不全では心臓はValsalva手技に対して特異的な反応を示す。

心不全診断に用いられる臨床検査は心電図、胸部レントゲン、心エコー図、運動負荷試験、B型ナトリウム利尿ペプチド、および完全な血液生化学検査である。胸部レントゲンは心臓の大きさと肺血管陰影の診断に用いられる。心エコー図は心臓の構造と機能に関する情報を提供する。心不全患者では心拍出量の減少、肺動脈楔入圧の上昇、最大酸素消費量と嫌気性閾値の低下を伴い、身体活動が低下しているために運動負荷試験や心肺負荷試験によって運動耐容能を検査する。B型ナトリウム利尿ペプチドは心不全重症度の指標である。

患者の予後は身体所見、B型ナトリウム利尿ペプチド、および最大酸素消費量によって判定される。静脈圧の上昇、第3音の存在、B型ナトリウム利尿ペプチドが73pg/mL以上、最大酸素消費量14mL/kg/min以下は予後が不良であることを示唆する。