心房細動を有する患者ではリズムのコントロールが望ましいと考えられることが多い。しかし、特に持続的な心房細動を有する患者ではリズムのコントロールに電気的な除細動が必要となる。除細動は細動が再発してしばしば不成功に終わり、抗不整脈薬の使用を余儀なくされることが多い。さらに、リズムコントロールには倒錯型心室頻拍のような特異的副作用の危険を伴う。
持続的心房細動の治療における心拍コントロールと電気的除細動の比較(Rate Control versus Electrical
Cardioversion for Persistent Atrial Fibrillation [RACE])試験は心拍コントロールはリズムコントロールに劣るものではないという仮説に基づいて行われた。試験にはオランダ全土の35の施設から522例の患者が登録された。
RACE試験の対象患者は少なくとも24時間心房細動か心房粗動が続いているが、その持続は1年を超えるものではないことが条件とされた。これらの患者は過去2年間に1または2回の電気的除細動を受けた既往をもっていた。
主要エンドポイントは、心血管死、心不全による入院、ペースメーカーの植え込み、重症の出血、血栓塞栓症の合併、または治療に基づく重症の有害事象(例えば、薬剤による心室性不整脈の誘発、または失神発作)を複合したものであった。
患者(平均年齢68歳、63%が男性)は無作為に心拍コントロールかリズムコントロール治療に割り付けられ、36ヵ月の追跡が行われた。
心拍コントロールはβ遮断薬、ジギタリス、カルシウム拮抗薬などの薬物によって行われた。症状が耐え難い状態で持続する場合には、電気的除細動か房室結節のアブレーションが行われた。
リズムコントロールは電気的除細動か予防的なソタロールの使用によって行われた。早期に、あるいは時間が経ってから再発を来した患者には、除細動と他の治療法を複合した特別の治療アルゴリズムに従って対応した。
試験の結果から、主要エンドポイントに達した患者は、リズムコントロール治療を受けた患者では22.6%であったが、心拍コントロール治療を受けた患者では17.2%にとどまったことが示された。この所見から心拍コントロールのほうがリスクの減少が5.4%大きいことになる。心拍コントロールは持続的心房細動患者の治療に対してリズムコントロールより劣るものではなかった。
主要複合エンドポイント
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心拍コントロール |
リズムコントロール |
エンドポイント |
17.2%
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22.6%
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リスクの低下 |
-5.4%
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エンドポイントの成分 |
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心血管死
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7.0%
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6.7%
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心不全
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3.5%
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4.5%
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血栓塞栓症の合併
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5.5%
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7.5%
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出血
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4.7%
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3.4%
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有害事象
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0.8%
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4.5%
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ペースメーカー
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1.2%
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3.0%
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各群で7%の患者が死亡した。両群とも半数の患者で死亡の原因は突然死であった。リズムコントロール群では、血栓塞栓症の合併が2番目に多い死因であった。心拍コントロール群では、出血や心不全による死亡がより多かった。
主要複合エンドポイントの低下は主に非致死的エンドポイント(心拍コントロールとリズムコントロール群で10%と15%)の改善であった。重症有害事象の発生率とペースメーカーの植え込み頻度に関しては心拍コントロール群でより減少がみられた。
サブグループ解析で高血圧患者には心拍コントロールがより有用であることが示された。しかし、このポストホックに推定された仮説はさらなる検討を必要とする。さしあたり、RACE試験の結果から心房細動の再発のリスクが高い患者では心拍数のコントロールが選択肢として注目されることが示唆される。
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