細冠動脈に対するヘパリンでコートしたステントの効果:COAST試験の結果
Heparin-Coated Stents in Small Coronary Arteries: Results of the COAST Trial

Michael Haude
University Clinic
Essen, Germany


冠動脈細血管の狭窄により症状を有する患者を治療する際、ステント留置とバルーン血管形成術とどちらが優るかという点は明らかにされていない。さらに、これら細血管の病変に対するヘパリンでコートされたステントの役割を明らかにした決定的なデータもない。

"細冠動脈におけるヘパリンでコートしたステントの評価試験"(Heparin Coated Stents in Small Coronary Arteries Trial [COAST])の目的は、元来の細冠動脈狭窄に対するヘパリンコートのステント(Jostent Flex)が血管造影上および臨床的にどれだけ有益であるかを検討するものである。

本試験にはヨーロッパの各地から21の施設が参加した。狭心症を有する605例の患者が登録され、次の3つの群に無作為に割り付けられた:バルーン血管形成術、コートされていないJostent Flexステント、あるいはヘパリンでコートされたJostent Flexステントである。前処置としてアスピリンとヘパリン10,000IUが投与された。

標的血管病変の内径は2.0〜2.6mmの間のものとされた。主要エンドポイントは6ヵ月目における最小血管内径であった。

ベースラインの患者背景や病変分布には3群間で差がみられなかった。それぞれの群で約80%の患者は多枝病変を有しており、血管造影により計測したリファレンスの血管径も3群でほぼ完全な一致がみられた(2.31〜2.33mm)。

インターベンションの後ではステント群で最小血管内径は大きく、拡大率も大で、残存狭窄の程度は小さかった。

6ヵ月後では、最小血管内径はぎりぎりの有意差をもってステント治療群に分があった。最小血管内径はバルーン血管形成術群で1.34mm、ヘパリンコートステント群で1.47mm、コーティングなしのステント群で1.45mmであった(P = 0.018)。

総合的な利点という点ではステント群に分があるが、後期における治療効果の衰退はステント群も血管形成群も同等であった。

これらの結果は再狭窄の減少率に関係するものではなかった。ちなみに再狭窄率はバルーン血管形成術で32%、コーティングなしのステントで25%、ヘパリンコートのステントで30%であった。

250日目における重大有害事象の頻度にも統計的に有意な差はみられなかった。両ステント群で2例の死亡例があったが、バルーン血管形成術群には死亡例はなかった。標的血管に再灌流術を施行する頻度はバルーン血管形成術群でやや高かった。250日目におけるイベントなしの生存率は両ステント群で88%、バルーン血管形成術群で84%であった。

以上の所見から、最小血管内径の改善に関してはステンティングがボーダーラインで優位であると考えられる。さらに、ヘパリンでコートしたJostent Flexステントはコーティングなしのステントに対して血管造影上からも臨床所見からも何ら利点は認められない。