PRINCE研究:プラバスタチンと炎症/CRPに対する作用
The Pravastatin Inflammation/CRP Evaluation (PRINCE)
Paul M. Ridker
Brigham and Womenユs Hospital, Boston, Massachusetts, USA

炎症の重症度の指標として用いられるCRPは、患者の年齢や人種差に関わりなく、心血管病の重要なリスク予測因子であることが示されている。冠血管内の動脈硬化プラークの不安定化とその破綻は血栓形成を促し、結果的に閉塞を起こす。このプロセスに炎症機転が重要な働きをしていることが明らかとなってきた。これまでに報告の有るWomenユs Health Initiative Studyでは、CRPや血清脂質の増加がプラーク破綻のリスク予測因子とされ、また CARE 研究ではプラバスタチン治療群でCRPの減少傾向を認めている。しかしこれらの研究は後ろ向き(retrospective)であり、十分なランダム化もされておらず、何よりもプラバスタチンの効果に焦点を当てて行われたものではなかった。

今回のACCでは、ハーバード大学Brigham and Womenユs HospitalのRidker 博士らが、このような背景を踏まえて、プラバスタチンのCRPおよび血清LDLレベルに対する作用を前向きに(prospective)検討した結果を報告した。

全体で2,237 名の患者が対象となった。プラバスタチン1日40 mg 投与群(日本では1日20 mgまで)とプラセボ群の2群に無作為に分け、 24 週間の観察を行なった。個々のグループ内で、心血管イベントの1次予防群と2次予防群の2つのサブグループが存在した。予測されたように、プラバスタチンはLDLコレステロール値を18%低下させたが、同時にCRP値も13%減少させた (p < .001)。プラバスタチン群のサブグループ内で検討しても、同様の結果であった。一方、プラセボ群では、LDLコレステロールにもCRP値にも有意な変化は認められなかった。

プラバスタチン効果の発現タイミングをみると、すでに12 週目で同様の結果が得られたことから、 Ridker博士 はプラバスタチンのCRPに対する効果は、患者の治療前のLDLコレステロール値や、その変化率に依存するものではなく、したがって本剤の脂質低減作用とは独立した作用であると述べている。CRP減少作用が臨床的に有効、すなわち心イベントを減少するかどうかについては、さらなる検討を要する。さらに、この作用がプラバスタチン独自のものなのか、このタイプのスタチン製剤に共通するものなのかは、現時点では、分からないとのことである。心血管病の発症に炎症機転が非常に重要であり、さらにスタチン製剤の有効性が認められていることから、このプラバスタチンにみられる作用についてさらに調べる必要があると考えられる。

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳・監修:京都大学医学研究科循環病態学講師 堀江 稔


Copyright 2000-2013 by HESCO International, Ltd. All rights reserved.