高血圧症における積極的降圧療法による内皮機能と血管内皮成長因子(血管新生の指標、VEGF)に対する影響
Effect of Intensive Blood Pressure Treatment on Endothelial Damage and Vascular Endothelial Growth Factor, an Index of Angiogenesis in Hypertension
Dirk Felmeden
City Hospital, Birmingham, England, UK

降圧治療の有用性について検討した本研究の対象者は、喫煙、56歳以上、糖尿合併などの主要な心血管危険因子が3つ以上あるようなハイリスクの高血圧患者136人である。患者は、アテノロール+ベンドロフルメチアジドあるいは、アムロジピン+ペリンドプリルの2つの治療群に無作為に分けられた。(単独療法から開始し、ほとんどの患者は用量設定の期間中に併用療法に移行した)

内皮障害の指標としてvWF(von Willebrand factor)、血管新生の指標としてVEGFが、治療前と降圧治療6ヵ月後に測定された。本研究の目的は、「高血圧合併症および降圧療法の有用性が、内皮障害や異常な血管新生と関連があるかどうか」を確認しようというものであった。
 
Felmeden博士は、未治療高血圧患者においてみられたVEGF上昇の理由として、まだ確固としたエビデンスはないものの、高い血圧に曝されることによって毛細血管が変性した結果ではないかと論じた。さらに、今のところ、VEGFが高血圧に伴う合併症の指標として有用であることは少なくとも言えるのではないかと説明している。
 

本研究の結果では、6ヵ月間の降圧療法によって収縮期血圧も拡張期血圧も有意に低下し、それに伴ってvWFやVEGFのレベルも低下した。すなわち、「内皮障害や異常な血管新生を伴うようなハイリスクの高血圧患者においては、対照と比較して6ヵ月間の降圧治療がこれらの障害を軽減できることが確認された。さらに、このことは、高血圧やその合併症の病態生理、ならびに、よく知られる降圧療法の有用性と関連していると考えられる。」

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳:大阪大学大学院医学系研究科加齢医学講師 楽木 宏実
日本語監修:大阪大学大学院医学系研究科加齢医学教授 荻原 俊男


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